214人が本棚に入れています
本棚に追加
俺はさぞかしマヌケな顔をしているのだろう。
元々顔立ちは良い方じゃないが、なんたって初体験をしたんだ。
開いた口はふさがらず、目はパッチリ。おまけに口と鼻を中心に白粉(おしろい)をつけている。
教室のあちこちで笑い声をこらえ、肩を震わせている人々が見えた。
「悪い、坂本!」
俺が突然のことで呆気にとられていると、右側から声がかかった。
ゆっくりと目線を動かしていけば、スッと通った鼻筋が目に入る。
続いて端が申し訳なさそうに下がっている二重の切れ目。
横に無造作に流されている前髪。
背景の窓から差し込む日の光でさらに薄い色に見える茶色い髪。
それらを持つ人物はこの教室に――いや、全校を探したって一人しかいない。
「……三上……お前は俺に何か恨みでもあるのか」
「いや、そういうわけじゃなくて……。単に手がすべったというか……」
「顔の高さでか?」
こいつが言うからなのか何となく嘘っぽい。
最初のコメントを投稿しよう!