見知らぬ手紙。

4/12
前へ
/138ページ
次へ
そして今、彼の隣には…。 アタシ達が別れた元凶。 何処にでもいる普通のオンナじゃないか…。 「他に好きなヤツが出来た。」 アイツの低音で冷酷な宣告が蘇る。 少しアルコールが入ってるね。何だか楽しそう。 上機嫌な二人の会話が、雑音をすり抜けてアタシの耳に届く。 いい笑顔をするなぁ…。 アタシは、彼の眉間の皺しか知らない。 あんな風に笑える人だったんだ。 もう其処に居場所はないんだな…と実感がわいてくる。 彼の何を知っていたんだろう。 何を見ていたんだろう。 もう帰る場所は…ない。 アノコが掴んだ幸福より、あの時のアタシはささやかなPRIDEを選んだ。 彼の包容力にすがるオンナにはなりたくなかった。 すべてに対等でありたかったんだ。 次の駅に到着すると…アタシの存在に気付かないまま、アイツは人混みの中へ消えていった。 人前で手を繋ぐようなオトコじゃなかったのにな。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加