見知らぬ手紙。

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ゆら。ゆら。ゆら…。 ふと、桜の甘い香りが鼻孔をくすぐる…。 フォーカスが徐々に絞られて、視界が鮮明になってきた。 ガシャーン。 瞬間、世界が反転して地面に叩きつけられる。 痛む脚をおさえて、マンションへ続く桜並樹を見上げた。 街灯に照らされて闇夜に浮かび上がる白く小さな花びらが、はらはらと散って、初雪みたいに舞いおちる。 ホッとする。 救われた…気がする。 細やかな瞬間だけど、世界はアタシを見捨ててはいないんだ…って思えた。
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