見知らぬ手紙。

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テーブルの上に置かれた封筒を前にして、何故かチェアの上に正座していた。 名前や住所はあっている。 やっぱり間違いじゃないよね。 うん。 でも…。 「北村裕也」なる人物を思い出せない、ない。 風呂あがりの右手に握られた缶ビールをグイッと飲み干して、やっと開封する決意を固めた。 新手の勧誘なら即座に破り捨ててやる。 うん。 以前、同級生を装った勧誘の葉書が届いて、その手口に呆れた事がある。 今の時代は「ナンデモアリ」なんだ。 封筒の中身は丁寧に折り畳まれた便箋が二枚。 几帳面な性格らしい。正確な長方形に折り畳まれている。 封筒の奥に異物の感触を感じて逆さに振ると、カサブタのように枯れた色の塊がテーブルに転がった。 植物の種? 見覚えがある流線形。 久しぶりに見た。小学生以来かな。 それは…3粒の向日葵の種だった。 不規則に楕円形を指先で転がしながら、ゆっくりと一枚目をめくった。
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