【翻訳】ビッグスリープ（大いなる眠り）

【１】

今は１０月中旬の午前１１時、太陽は顔を出さずに丘陵が広がった先に激しい雨が降ったことが見てとれた。

私は、パウダーブルー色のスーツに、深いブルーのシャツに、ネクタイ、胸ポケットからはデスプレイ用のハンカチを覗かせていた。

黒の安物の革靴に、黒のウールのソックスには、ダークブルーの時計の模様が入っている。

身だしなみは、スカッとして、清潔で、シラフで髭も綺麗に剃っていた。

私のことを誰かが知っていようが気にしてはいられない。

私は全てがきちんとした身なりの私立探偵に見られる必要があるのだ。

４００万ドルの依頼人に呼び出されたのだから。

スターンウッド邸のメインの玄関ホールは、２層の高さになっていた。入口のドアの上を軽く越え、恐らくインドの象の軍隊も招き入れることが出来るだろう。

そのすぐ側には幅の広いステンドグラスがあり、そこには黒ぽい鎧を着た騎士が、木にくくり付けられた女性を助け出そうとしていた。

女性は服を着ていず裸だったが、非常に長く便利な髪の毛を持っていた。

騎士は前のバイザーを上げ後ろにやり、モタモタと括られた女性のロープの結び目をいじっていただけで、一向にはかどっていない様子だった。