【翻訳】ビッグスリープ（大いなる眠り）

【１】

私はそこに立ち止まりながら考えていた。

もし私がここの家の主なら、遅かれ早かれそこに駈け登り、彼を助けただろう。

彼が真剣に助け出そうとしているとはみえなかったからだ。

この今立っている玄関ホールの後ろにはフランス風のドアがあり、さらにその向こうには、エメラルドグリーンの大きな磨かれたガラス製の白いガレージがあった。

その前ではエビ茶色したバッカード社製のコンバーチブルを、黒く輝いたゲートルをした肌が黒く若くて細い運転手が埃を落としていた。

そのガレージの奥には、装飾的な木が植えられ、どれも注意深くプードル犬のように刈られている。

更に向こうには、ドーム型の屋根をした大きな温室があった。

そしてその後ろには、不規則に緩やかな丘陵が広がっていた。

玄関ホールの東の壁にある階段にはタイルが敷かれ、薔薇の絵が描かれた精巧な鉄製の手摺と、その壁には別のロマンスが描かれたステンドグラスがあった。

空いた壁の回りには、ビロードの円いシートが付いた大きくて堅そうな椅子が置いてあったが、長い間誰も座った者がいないようだった。

西側の壁の真ん中には大きく中身が空っぽな暖炉があり、真鍮の四つの蝶番がついたスクーンがその前に置かれていた。