【翻訳】ビッグスリープ（大いなる眠り）

【１】

彼女の目は青みがかった灰色をしていたが、私を見てもほとんど何の印象も浮かばないようだった。

彼女はこちらに近付いて来ると、唇に微笑みを浮かべた。
彼女は小さくて鋭い肉食性の生き物のような歯を持っていた。
白い歯は皮を剥いた新鮮なオレンジのようでもあり、輝く陶器のようでもあった。

それらがこわ張った薄い唇の間で煌めく。
彼女の顔は、血色が不足し余り健康そうには見えなかった。

「背が高いのね」
彼女がそう言った。

「そんなつもりではないんだが」

彼女の目がクルクルと回った。困惑されたといった様子で考えていた。
その様子を見ていると、ほんの今し方出会っただけだが、考えるという行為は、常に彼女を悩ませてしまうものらしい。

「おまけに、ハンサムだし」
そう言うと話を続けた。
「間違なくなく、あなたはそれをわかっているのね」

私はそれを認めた。

「名前は？」

「ラリーだ。ドッグハウス・ラリー」

「へんてこな名前ね」

彼女は唇を噛んで、少し頭を傾ける。目で私を追い掛けながら睫毛を下げた。

睫毛がほとんど両頬を包み込もうとした時、再びゆっくりと睫毛が上がった。

まるで劇場の幕のようだ。
私はトリックに気付いた。
ぼんやり見つめていると、背後から４つ足の生き物に襲われてしまうだろう。