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「あなたは、賞金稼ぎのボクサーなの?」
私がたずねない時、彼女が質問した。
「正確にはそうじゃないな。
覗き屋だよ」
「ああっー」
彼女は怒りながら頭を上下に振った。
広く薄暗い玄関ホール豊かな色彩が煌めく。
「あなたはうちをからかっているのね」
「どうもね」
「何ですって?」
「君がたずねたんだよ。その答えを言ったまでだ」
「あなたは何も答えてないわ。
あなたは人をからかうのが好きな天の邪鬼よ」
彼女は親指を突上げると、親指を囓り出した。
親指は鋭く奇妙な形をしていた。薄くて細く予備に生えた指のように見えた。
最初の関節には曲線がなかった。
彼女はそれを囓ると、ゆっくりと口の中で回しておしゃぶりのように吸い出した。
「あなたは、驚いちゃうくらい背が高いのね」
そう言うと、密やかに笑い始めた。
そして両足を浮かせることなく、体をゆっくりとしなやかに向きを変えた。
そして両手をだらりと体の横に垂らし、爪先立ちで体を私の方に傾けると、そのまま私の腕の中に背中から倒れて来た。
私は彼女を受け止めなければならなかった。
そうでなければ、モザイク模様の床に頭を叩き割らせてしまうことになっただろう。
私は彼女の腕の下を掴まえると、私の体には彼女のゴムのような両足の感触が伝わる。
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