《遺書・遺詠-壱-》

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[枝 幹二…22歳] あんまり緑が美しい 今日これから 死にに行く事すら 忘れてしまいそうだ。 真っ青な空 ぽかんと浮かぶ白い雲 六月の知覧は もうセミの声がして 夏を思わせる。 作戦命令を待っている間に 小鳥の声がたのしそう 「俺もこんどは 小鳥になるよ」 日のあたる草の上に ねころんで 杉本がこんなことを云っている 笑わせるな 本日十三、三五分 いよいよ知ランを離陸する なつかしの 祖国よ さらば 使いなれた 万年筆を“かたみ”に 送ります。 枝 幹二大尉(富山県) 第165振武隊 昭和20年6月6日戦死
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