新学期は最低最悪

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 かつて無いぐらいの全力疾走で梨歩が向かった所は校舎の裏、淋しい雰囲気の裏庭だった。一本だけ植えられた桜の木はまだ花をつけているが、大方は地面に散り敷いて、淡い色の絨毯を作っている。 「……もう嫌だよ……」  木にもたれてその場にずるずると座り込むと、自分一人しかいないことに安心して、つい本音が出てしまった。 ……このところずっと溜め込んでいたものが、そろそろ限界だったのかもしれない。 相沢 梨歩 私立桜花学園高等部  3年2組在籍 部活は美術部 ―超がつくほど気弱な17歳。勉強、運動、共に平均程度。  つまり、良く言えば大人しい、悪く言えば目立たなくて地味なタイプの女子高生だ。  そして、今年最初のホームルームで行われたくじ引きで(クラスの役職を決めるのはくじ引き、という不思議な慣例がある)『絶対零度の毒舌』藤宮雪と一緒にクラス委員をやる羽目になってしまうという不運体質も持っている。
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