第二楽章…雨にオチル

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《ナミ》 ………… 四時に目覚まし時計が鳴る。 古くさい黄色い時計のベルを止め、あたしはベッドに寝たままゆっくりストレッチする。 毎朝替えられない儀式のようなもの。 カーテンを開けると、明け切らない梅雨の空が、窓の外に寒々と広がっていた。 今朝は窓を開けるのを諦め、洗面所で用を済ませ、昨日録画したドラマを再生する。 あたしは、夜、テレビを観ない。 次の日に中等部の女の子の話題になりそうな……大抵はドラマとバラエティーを一時間ずつ録画して、翌朝観ることにしている。 部屋のミニ冷蔵庫から自家製パックの入ったタッパーを取り出して、泡立てて、顔に塗りたくる。 硬水をちびちびと飲みながら、慣れた手順でテレビの前でプチヨガ。 十四種類三セット。 バラエティーに移る頃には、どんな季節でも、うっすらと汗ばんでいる。 毎晩八時に電源を切っている携帯電話を、オンにする。 たまっていたメール全てに、返信文だけ打っておく。 送るにはまだ早い時間。 画面の中のお笑いタレントに薄ら笑いを投げつつ、今度はファッション誌に目を通す。 少ないあたしの予算で今夏は何が買えるかな、なんて思いながら。
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