160人が本棚に入れています
本棚に追加
《ナミ》
…………
四時に目覚まし時計が鳴る。
古くさい黄色い時計のベルを止め、あたしはベッドに寝たままゆっくりストレッチする。
毎朝替えられない儀式のようなもの。
カーテンを開けると、明け切らない梅雨の空が、窓の外に寒々と広がっていた。
今朝は窓を開けるのを諦め、洗面所で用を済ませ、昨日録画したドラマを再生する。
あたしは、夜、テレビを観ない。
次の日に中等部の女の子の話題になりそうな……大抵はドラマとバラエティーを一時間ずつ録画して、翌朝観ることにしている。
部屋のミニ冷蔵庫から自家製パックの入ったタッパーを取り出して、泡立てて、顔に塗りたくる。
硬水をちびちびと飲みながら、慣れた手順でテレビの前でプチヨガ。
十四種類三セット。
バラエティーに移る頃には、どんな季節でも、うっすらと汗ばんでいる。
毎晩八時に電源を切っている携帯電話を、オンにする。
たまっていたメール全てに、返信文だけ打っておく。
送るにはまだ早い時間。
画面の中のお笑いタレントに薄ら笑いを投げつつ、今度はファッション誌に目を通す。
少ないあたしの予算で今夏は何が買えるかな、なんて思いながら。
最初のコメントを投稿しよう!