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《杏香》
…………
見えるか見えないかの細い雨の糸が、灰色の空にぶら下がっている。
昼休みを告げるチャイムを待ちながら
杏香は、教室の窓の外を眺めて時間をつぶしていた。
(雨の日のナミ、いつもよりイイ匂いがするんだよね////)
オヤジみたいなことを考えて
四限の授業は、上の空。
ナミを想うと
見るだけで肌寒くなる風景も、色鮮やかに変化する。
鐘の音が鳴ると同時に、生徒会長とは思えぬ早さで
杏香は風組を飛び去った。
勢いよくナミのクラスのドアを開けたら、まだ授業中
……なんて、よくある話;
今日は、授業は終わっていた。
ナミは板書を消している。
「ウィッス⌒☆」
杏香はナミに軽く挨拶し
雨のせいで混む教室に、ランチ場所をキープすべく
ナミのグループトモダチと、机をくっつけ始めた。
ナミが女のコ的グループをクラスで作り、杏香がフラッと加わる。
小学生時代のいつからか、定着しているスタイルだ。
「光也ぁ~弁当くれ!」
『もぅ★ノロケるなら、二人で食べればぁ~』
杏香の毎度の弁当催促を、周りの女のコたちは、律儀に毎回冷やかす。
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