第一楽章…桜雨

6/11
前へ
/406ページ
次へ
(やったぁ↑ヨカッタ♪ ……じゃない、か;) ナミの肩が、小さく震えている。 杏香はナミにそっと手を伸ばし…… 触れることが出来ずに、自分の手を握りしめる。 手のひらに爪が食い込むぐらい、ギュッと。 (アタシが、男……だったら ナミを抱きしめて絶対離さないのに↓↓) 「ナぁミっ♪」 ワザと明るい声で 杏香はナミと窓の間に身を滑らせる。 ナミは泣いて……いなかった。 (こんな時でも笑顔が貼りついてるんだから; ……もう!) 「ほら、座って座って! 杏香サマが髪の毛とかしたげるっ♪ 桜がいっぱいついてるよ~」 (これ以上ナミの顔見てたら、理性ぶっ飛ぶ!) ナミを無理やりイスに座らせて 杏香は自分のクシで、細くて絡まりやすい親友の髪をすいていく。 「なぁ……ナミ」 『ん?』 杏香の細い指が、髪を滑る。 (「姉ちゃんよりナミを、愛してる」なんて言っても…… アタシじゃ、ダメだ;) 「おんなじクラスになるとイイな!」 (それが、ナミとの最短距離……) 杏香は、桜の花びらを胸ポケットにしまった。 ……コッソリと。
/406ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加