プロローグ

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そこにはひとりの男がいた。 机の上にある書類などを片っ端から投げている。 彼の身体は緑色に染められていた。“ヤツら”の血によって。 「It is already unpleasant! I want to return to the house! Here is what on earth!!! (もう嫌だ! 家に帰りたい! いったいここはなんなんだ!!!)」 彼は狂う寸前だった。 なんだか分からない間にここにいて、なんだかわからないモノに襲われるのだ。 そして、その間にも“ヤツら”の魔の手は迫ってくる。 ドンドンドンッ! という激しい音がし、彼の身体が震える。 ヒッ、と小さな声を上げおびえたような目でドアの方を見る。 ドアはへこんでいた。きっとドアの向こうにいる“ヤツら”のせいだろう。 ああ、もうヤツラが迫ってきたのか……――。 彼は、覚悟をきめた。 彼は手に持っている拳銃を自らの頭部に当て……―― ズトンッ、という鈍い音が響いた。 彼は最期に呟く。 「Mammy(お母ちゃん)」……――と。 扉を開けた“ヤツら”は彼を見た瞬間我先にと彼に噛み付く。 すると彼の目が見開かれ、彼は起き上がったのだ。これで彼も“ヤツら”の仲間入りだ。 “ヤツら”たちの雄叫びが館中に木霊する――。 その様子を水晶越しに見る青年がいた。身体は激しく腐敗しており、まるでゾンビそのもの。というより、青年はゾンビだった。 「ふはっはははははははあああああああああ!!」 青年は狂ったように笑い出す。 いや、この館に狂っていないものなどいない。 青年は嬉々として水晶を見つめる。 次の“彼”だった人物を探しているのだ。 この館の言葉を喋れるものの間では“犠牲者”という単語で通じる、モノを。 水晶に映し出されたのは一人の女だった。髪の毛は腰ほどまであり、ベンチに座って携帯をいじっている。 時々イライラしたように舌打ちをしては、時計を見ている。 「アキ、ト……?」 青年は笑うのをやめて、水晶を凝視する。 女の名前は“あきと”。 青年が次の“犠牲者”をきめた瞬間だった。 彼は部下を呼び、女をこちら側に呼ぶよう手配した。 指パッチンで先ほど破壊されたドアを直し、ついでにゾンビたちを部屋から引き上げさせた。 そしてまた笑い出す。 「アキト、アキト、アキト、アキト、アキト、アキト――」 狂ったように、何度も何度も女の名前を呼ぶ。 悲劇の、始まりだ。
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