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「あんたが遅れるのならわかるけど、先輩が遅れるなんて……ウッ」
坂内時雨(さかうち しう)はあきとをちらりと見たあと、うめき声を上げた。
そのうめき声は、あきとによってシメ技をかけられたためだ。
時雨は彼らの待つ拓也を含めた中で、あきとの次に小さい。
時雨は彼らの中で唯一の年下であり、あきとがかけたしめ技で骨が折れてしまいそうなほど細い。
「がーっ、ギブッギブッ!つーか、ねぇ! あっちあっち!」
時雨が指差す方をあきとが見ると視線をあげると急いで階段を上がってくる、拓也の姿があった。
額には汗が滲んでおり、彼のトレードマークのメガネがずれていることがら急いできた、ということが伺える。
「タクおっせーよ、ハゲっ!」
そう言って、あきとは立ち上がり小走りでやってくる拓也の腹に拳を叩き込もうとした。
しかし、あきとと拓也の(腐れ縁の)付き合いは長い。その動きを予想し、あきとを地面に叩きつけた。
「俺はハゲてねぇ」
拓也はそう言って、鼻を鳴らした。
しかし、そこで黙っているほどか弱いあきとではない。
むしろ、そこで黙ってないていたら、拓也もこんな酷い扱いはしない。
あきとは拓也に足カックンをすると、バランスを崩した拓也を後ろから蹴り飛ばす。
拓也は、地面とキッスする羽目になった。
別にあきとは拓也のことが嫌いではない。
むしろ、友人として、大好きで大切だから。だから多少暴力的な事をしてしまうのだ。
それは、拓也も……この場所にいるメンバー全員が理解していた。
あきとにとって、暴力は挨拶代わりのようなものだ。
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