証人

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それから、僕がお店に飲みに行くとリリカと会話をするようになった。 おとなしいと思ってた彼女は、少し毒舌で醒めているところはあるものの、根はとても優しい女の子だった。 ある日。 職場から家に帰ると、珍しい事に妻が家にいた。 僕がただいまと言っても返事もなかった。 妻はコンビニで買ったパンをかじりながら、何かの本を読んでいた。 「…ハァ。今帰ったよ」 「あ、そう。おかえりなさい。今日は珍しく飲みに行かなかったのねぇ。いつものように行ってきたら?あなたの食事ないし」冷たく僕を一瞥すると、彼女はまた本に目を戻した。 それからは、まるで目の前の僕がいなくなったようだった。 一体、妻にとって僕はなんなんだろう? 息子が死んでから、妻は教師という職業に一層のめり込んでいるのがわかる。 気持ちはわからないでもないが、ほっておかれる僕はどうすればいいのか? 息子が死んでちょうど10年はたつが、こっちがどんなに歩み寄っても妻が寄ってくる事がなかった。 妻との事で、すっかり疲れはてた僕の頭の中にリリカの笑顔が浮かんだ。 こんな時に思い浮かぶなんて、僕はなんてズルい男なんだ。 だけど、僕は着替えもせずに家から出てリリカの働くお店に向かった。
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