証人

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僕がたまに行く場所。 それは10歳で死んだ息子の墓だ。 妻は、絵ばかり書いててあまり勉強をしない息子をしかりつけ、手をあげたらしい。 そして、ショックを受けた息子は、家から飛び出し、目の前の道路で大型トラックに轢かれた。 即死だったそうだ。 妻は必死になっていろいろ言い訳を並べたが、そんな言葉を聞きたいわけではなかった。 妻の口からは、今まで一度として謝罪の言葉を聞いた事がない。 この出来事は、僕が仕事に行ってて留守の時に起きたから、息子の死を受け入れるのに時間がかかった。 何年かして、やっと息子の死を受け入れると、1ヶ月に一回はお墓参りに通っている。 息子の墓には、新しい花とあいつの好きだったお菓子や飲み物を持って行く。 息子の墓にいろいろ話しかけていると、爽やかな風と共に何か囁く声がした。 僕が不思議に思い、顔を上げたら、真っ暗な長袖ワンピースを着たリリカがこっちに近づいてきた。
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