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私と雄一は、美術館に行き、回り疲れた足を引きずって美術館の中にあるカフェに行った。
静かなここのカフェは、私が美術館に来ると必ず寄る場所だ。
「何か、今日はデートみたい。いつも飲みに行って、私の部屋だから」
「リリカちゃん、ごめんね」雄一は悲しそうな表情をして頭を下げた。
「なんで?」雄一が謝る意味がわからずに、私は尋ねた。
「だって、まるで君を僕の都合のいいように…」雄一が申し訳なさそうに言った。
「また勘違いして~」私はため息をついて、コーヒーを飲んだ。
「勘違いって?」
「私がこういう付き合いのが気が楽なのよ。あなたには帰る場所があり、私はあなたには縛られない。意味がわかる?」
「リリカちゃん…。やっぱり、僕たちはもう会わない方が…」と雄一は飛んでもない事を言い出した。
あいつに苦しんで貰わなきゃなんないんだから、そういうわけにはいかない。
けど、ここでそんなの気にしないで続けようってのもちょっとおかしい。
私は一か八か賭けに出た。
「うん。わかったよ。雄一さんがそう言うならしょうがないわね。私は去るものは追わない性格だからいいよ」私はハイヒールを脱いで、テーブルの向こうに座る雄一の太ももを爪先でなぞった。
雄一は体をビクッと振るわせた。
「じゃあね、雄一さん。いろいろ楽しかったわ」私は立ち上がり、お別れの挨拶をしてカフェから出た。
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