耽溺

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美術館で去ってくリリカを見送りながら、僕はなんてバカな事を言ってしまったのかと後悔した。 だけど、これで良かった。自分には妻と言う存在がいるのだから。 リリカが目の前から居なくなったと言うのに、僕の頭からリリカの瞳が離れない。 あの大きくて綺麗で、その奥には何かが隠れている。 その何かを見つける前に、こんな事に…。 このまま家に帰って、僕はあの冷たい空気を我慢出来るのか? リリカを知ってしまった今、あの空気に晒されたら僕はおかしくなってしまうだろう。 いや。もう僕はおかしいんだ。 僕はカフェから出て、当てもなくフラフラと歩きだした。
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