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俺が居たのは教員用の寮、藤河さんや俺は大学寮の為、全力疾走をしていたからか部屋に着く頃には息も絶え絶えだった。
呼吸を整え、ドアをノックし出迎えてくれた藤河さんは衰弱しきっていた。
「…藤河さん…何が…あったんです…」
声が掠れた…余りにも普段の面影がなく、泣きたいのを我慢している様子だったからだ。
俺は、学習机の椅子に座った藤河さんの傍らに立って肩に手を置き、優しく問い掛けて言葉を待った。
「…別れを告げられた…朝に…」
幾拍かの間を置いて藤河さんの口から出た言葉に、俺は立って居られないくらいの衝撃を受けたが、それでも朝からずっと一人で耐えていた藤河さんがどんなに辛かったか…。
気付けば俺の名前を呼びながら、声を押し殺し腰にしがみついてきた藤河さん…。
それを思うと涙は止まらず、力強く抱き締めて
「もっと早く来れなくてスミマセン…!!」
と泣きながら謝っていた。信じられない思いと、何て残酷な事をするんだ…そう思った…。
頭の良い人だったから、これも計算づくだったんだろう…。
誕生日に別れる…忘れたくても忘れられない…そんな傷を付けたんだ…。
「此処には俺以外居ません…だから思いっ切り泣いて下さい…。藤河さんが泣いた事は俺以外知りませんから…」
そう告げて、結局俺は、泣いて居る藤河さんを一晩中抱き締めて、その背中や黄色い茶髪の頭を撫でて、ひたすら泣き止むまで…辛さを吐き出せるだけ吐き出させていた…。
『辻は俺の癒しやねん。マイナスイオン出てるんと違うか?人間抱き枕』
と言って笑っていた藤河さん…。
またあの笑顔が見たいから…。
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