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翌日…。目を覚ました藤河さんに
「辻…辻…お腹空いた…チーズケーキ食べたい…」
そう言って起こされた。
普通なら、朝食と言った物は旅館が用意するが、素泊まり状態で持ち込み可能だった為、前日の朝に作って置いたチーズケーキを持ってきていて、冷蔵庫に入れておいたのを藤河さんは知っていた。
知っているが、本人は絶対に出さないし勝手に食べない。それは、面倒くさいのもあるのだが…。
「はいはい、ちょっと待って下さいね~」
眠い目を擦りながらも、体を起こして布団を抜け出し、はだけた袷を必死に合わせていると、その姿に珍しく動揺した声が後ろから聞こえた。
「…辻、お前なんで浴衣はだけてるの?俺、もしかしてヤッちまった…?」
帯で辛うじて身に纏ってる状態の姿と、昨夜の記憶のなさに窺う様な問い掛けだったが、
「違いますよ。俺、浴衣着ると必ずこうなるんで…」
と苦笑いで返すとホッと息を吐いて、何時の間にか俺の背後に座り込み、肩に顎を乗せて、何時もの様に口を開けて催促してきていた。
その口に、少し大きめに一口ずつ切り分けたチーズケーキを入れて食べさせていく。
その間、次の一口を大人しく待ってる藤河さんは、やっぱり雛鳥の様だった。
「ん、やっぱり辻のチーズケーキは旨いな。流石、専属パティシエ」
そう言って、嬉しそうに笑ってチーズケーキを食べる藤河さんに、至上の喜びを感じていた…。
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