零れる笑みは君を想うから

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寂れた雑居ビルの中に私の仕事場はある。 時刻は7時半を少し過ぎたあたり。 定刻内に業務を終わらせる事は残念ながら出来なかった。 まぁ、この時期は新人研修で忙しいから仕方ない事ではあるのだが……。 素早く帰り支度を整えて、老朽化した手摺りの無い階段を勢いよく下る。 五階立てのこのビルには、エレベーターは無いからだ。 それについて不満の声を聞く事もあるが、一昨年、父親からビルの権利を引き継いだという管理人に改善の意思は無いらしい。
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