零れる笑みは君を想うから

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「これからデートですか?」 不意に声を掛けられて多少ビクつく。 声の主は年若い警備員。 この声の高さと響きは……女? 「……え?えぇ、そ、そうですけど。」 突然話しかけられたせいもあるが、男だとばかり思っていた人が実は女であった事への驚きで、返答が多少歯切れの悪いものになる。 目深に被った帽子の下から覗くのは、派手さは無いが整った顔立ち。 よく見れば、薄らと化粧をしている。 何故、今まで気付かなかったのだろう? 胸元のネームプレートには、 「橘瞳」 と書いてある。 間違いなく女性だ。 ……橘瞳? そういえば、麻衣がそんな名前を口にしていた。 円香の部屋の隣りに引っ越して来た人がいるとか何とか……。 確か、その人物の名前が 橘瞳 ……だった様な気がする。
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