零れる笑みは君を想うから

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扉の外は薄暗い細い路地へと続く。 人影はまばらで、その中に見知った顔はいない。 私の職場があるビルは、駅から多少距離が離れていて、周辺に飲み屋の類いは無い。 あるとすれば、平日にだけ現れる、おでん屋の屋台の赤提灯ぐらいだ。 近隣の企業の多くは週給二日を推奨している為、それに合わせての事だろう。 私は下戸なので数える程しか立ち寄った事はないが、割と繁盛している。 しかし今日は土曜日だから、その姿も無い。 唯一の娯楽を失った通りに足を止める酔客な者はおらず、皆、足早に大通りへと向かう。 私もその内の一人だ。
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