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夕方の風が吹く。
少しひんやりした温度が火照った頬にはちょうど気持ち良い。
オレンジ色の夕日にやさしく包まれて
長い長いキスをした後……
「じゃあ、帰るか……ん!」
りゅうちゃんが照れくさそうに頭をかきながらあたしに自分の右手を差し出した。
「?」
あたしはその手に取り合えず自分のカバンを渡すという王道のボケに走ってみた。
「って、ちっがーう!!」
当然怒られた……。
「お前オレにカバン持たせようなんていつからそんな生意気になったんだよっ!!」
「え、だって…」
「普通はこうだろ!こう!!」
怒ったままのりゅうちゃんがまだ惚けているあたしの左手を乱暴に取ってそのままズカズカ歩き出した。
「おっお前歩くの遅いからなっ!だからだからなっ!」
「そっそうだよね!」
「そっそれに~~~;;
こっちのがソレっぽいだろ!」
「うっうん!ソレっぽいよね!」
「………」
「………」
「なっ、何かしゃべれよ」
「うぇ!?あっあたしが!?えっえええええと~……;;」
「早くしろアホ!!!」
キスした後の会話はいつもと同じようで、
でもやっぱりどこかぎこちなくて、
好きって言ったって
キスしたって
手を繋いだって
まだそう簡単にはこのキョリに慣れなくて戸惑ってしまうあたし達。
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