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「はぁ・・はぁ・・」
走ったから、だからあつい。
走ったから、だから心臓がドクドク跳ねてる。
だけどオレはそれだけじゃない。
じゃあ――――壱花は?
「はぁ、何で逃げんだよ」
「・・・・」
「オレに何か用あったんじゃねえの?」
「・・・・」
壱花は下を向いたままでどんなツラしてんのかがわからない。
「あのさ!黙ってねえで何か」
トンッ!
「ん?」
顔はまだオレから背けたままで壱花がオレの胸に何かを軽く押し付けた。
掴んでいた壱花の手を離してそれを受け取った。
駅前のCD屋の袋。
中身は・・・
「・・・・マンガ?」
「つっ続き!そろそろ今りゅうちゃんちにあるやつ全部読み終わったんじゃないかなって思って・・・」
「あ~そういや・・そうだ」
「とりあえず二冊もってきた」
「あ~・・・そう・・・・そっそれだけ、か?」
「そっそれだけ」
「あ~・・・そう」
「・・・・」
「・・・・」
何だ・・・用ってそれだけ?
こいつがそれだけって言ってんだからそれだけなのか・・・
そうか、それだけ―――・・・
って!違う!コイツがそうでもオレはそれだけじゃない!
「いち―――」
「ウソだよ!!!」
「・・・へ?」
思わずマヌケな声が出た。
「ウソ!違う!そんなのただの口実!本当は謝り・・・・」
「え?何て?」
壱花は自分の腕で顔を隠しながら何か言うもんだから声がちゃんと聴こえなかった。
だから邪魔な壱花の腕を掴んで壱花の顔の前からどけた。
そしてそこに見えた壱花の顔は・・・
「え゛!!?」
「う゛っう゛~~~~!!」
目にいっぱい涙が溜まってて、オレに顔がはっきり見えるようになったとたんそれがボロボロと零れ落ちた。
(なっ泣いてる!?!?)
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