色彩

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それは ポツポツと大粒の雨がアスファルトに落ちて じわじわとひとつひとつの斑点が広がって だんだんとアスファルトの色を濃く変えていくみたいに 俺の中に落ちる黒。 そうなってほしいという期待と そうならないでほしいという欲望。 矛盾した白と黒。 その感情の行き先は・・・ 「・・・・あ・・・やま」 「・・・・」 「―――秋山くん!」 「・・・・え?」 自分の名前が呼ばれたことに気がつき、無意識に左手の上でクルクルと回っていたシャーペンの動きを止めて顔を上げて前を向いた。 先生の不安そうな顔と、周りからの視線。 「・・・・」 (・・・授業中だったっけ) 「秋山くん、大丈夫?体調が悪いなら無理しなくても保健室に行ってきてもいいのよ?」 「は?」 (体調が悪い?) 「だって、あなた今朝も体調が悪くて遅れてきたでしょ?」 「あ~・・・」 今は丁度担任の授業だった。 担任は心配した様子で気を使うように俺に話しかけてくる。 これだから“優等生”は役得だ。 仮病でも何でも、“偽り”だとしても俺の言うことには全てに信用が置かれている。 ニコッ 「・・・・いえ、大丈夫です。すいません、授業中断させてしまって」 「あら・・・だっ大丈夫ならそれでいいのよ。だけど本当に無理しないでね。じゃあこの問題を前に出て解いてもらえるかしら?」 「はい」 (ふっ、なに生徒相手に顔赤らめてんだか・・・) ほら、大丈夫。元通り。 前に出て黒板にスラスラと数式を並べる俺の背中は、後ろにいるクラスの生徒には“品行方正非の打ち所のない優等生”にしか映らないだろう。 大丈夫、答えも間違っていない。 いつも通り、正常だ。 なのになぜ・・・ カッカッカッ――… ボキッ!! 「・・・あ、すいません。力入れて書きすぎたみたいで・・・新しいチョークもらえますか?」 こうもイラつく?
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