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「・・・ほんと、困ったことになったよ」
多分どうしたらいいかわからないんだろう、顔を俯けていた壱花ちゃんに少し刺を入れてみた。
「え・・・」
顔を上げた壱花ちゃんの表情には不安が滲む。
「これから夏休み明けの文化祭と体育祭の準備や会議やらで生徒会が忙しくなるって言うのに」
「あ・・・」
「この時期に手が使い物にならないって最低だよね。どうしてくれるわけ?この手じゃなーんにもできないじゃん」
「ごっごめんなさい!本当にごめんさい!」
「ごめんごめんってさー、謝ってるけどそれって何か意味あるわけ?謝ったって手が使えるようになるわけでもないし。口では何とでも言えるんだよ」
そしてどんどん刺の数を増やしていく。
もうこうでもしないとやってられないんだよ、こっちは。
「えっ!でっでもあたし本当に申し訳ないことしたなって思って・・・」
「ふーん、じゃあさ、責任とってよ、壱花ちゃん」
「え・・・?」
「・・・」
壱花ちゃんの顔を見て思わず口の端が緩んだ。
「もちろん・・・俺の右手になってくれるんだよね?壱花ちゃん?」
「うっ・・・」
いつもの黒い笑顔を浮かべてやれば、眉毛の橋を下げて今にも泣きそうなツラ。
ふふ、そうそう、壱花ちゃんなんてそうやってずっと困ってればいいんだよ。
こっちがてこずらされるなんてホントごめんだね。
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