鈍色

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「会長の右手になります!!!」 確かにそう言った。 「頑張ります!!!」 ガッツポーズをして気合を見せると、ただ黙って自分の前に佇む俺のカバンを引っ手繰った。 「きょっ教室まで持って行きます!」 「・・・・」 「ひっ!!」 「・・・・」 目の前のバカのおかげでここが“外”だということも忘れ、目の前のバカを思いっきり酷薄な表情で冷却な視線を浴びせてしまった。 それから一瞬でまたいつもの“爽やかな生徒会長”の顔に戻した。 ニコッ 「・・・・」 「?」 「ありがとう心配してくれて。だけど全然大丈夫だから。ホント全然大丈夫だから。気にしなくてい・い・か・ら」 「・・・・」 笑顔はたまに拒絶の盾にもなる。しかも最後は念押しのためやや強調気味。 ここまでキラキラした笑顔で断られたんじゃ普通はそれ以上押すことに気が引ける。・・・普通はね。 「ね?」 「・・・・」 俺はカバンを受け取るための左手を差し出した。笑顔を崩さず。 「・・・・会長」 「ん?」 「お昼は何派ですか!?」 「・・・・は?」 「お弁当派ですか?購買派ですか!?食堂派ですか!?」 「・・・・食堂」 「じゃああたし頑張って席取っておきますね!」 「・・・・は!?」 俺らしくもない、思わず口を大きく開けてしまった。 だけど俺の反応なんか気にもしてない彼女は俺の左手にカバンを渡すと 「じゃあ、カバンは返しますね。あたし他のところで頑張ります!」 「・・・・っ」 「じゃあ、先に行きますね。失礼します」 ペコッと頭を下げると小走りで校舎の中へと姿を消した。 「・・・・・」 もはや声も出ない。 ちょっと待て・・・ 何だ今の? 何でそうなる? ありえない。全然通じてない。 「・・・・・」 「お~す!秋山~!何でこんなところに突っ立ってんだ―――」 ポンッ! 「ひっ!!!」 「・・・・・」 俺が今どういう心境か教えてあげようか? クラスメイトが後ろから肩を叩いてきたにも関わらず、いつもの笑顔を演じる気も起こらないぐらい・・・ めちゃくちゃ頭にきた。 腸が煮えくり返るどころのレベルなんかじゃすまない。 マジで何なんだあの女!!!!
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