鈍色

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「田中さん、向こうの棚から去年の体育祭の資料取ってきてくれるかな?」 「はーい」 「丹部さん」 「はいはいはーい!!」 「・・・え~と、このアンケート学年別に集計出してもらえるかな?」 「はーい!!」 「じゃあ次・・・あ、体育教官室にプリントもらいに行かないといけないんだった・・・僕が行ってくるからここを神無月さんに少しまかせても―――・・・」 「あ、じゃあ私行きます!!会長がわざわざ足を煩わせる必要はありません!!」 「あ、そう?じゃあよろしくお願いします。―――で、次にこのプリントを・・・」 言いかけてから室内の端にちらっと目を走らせた。 『ねぇ~何ででわざわざ生徒会の仕事とか面倒くさいこと手伝ってんの~?』 『えっと・・・』 『つかさ~マーくんと仲良いの~?』 『・・・まっマーくん?』 『そ!“マサキ”だからマーくん♪』 生徒会室の真ん中にある机の端に座って作業をする二つの影。 それに近づいてまず片方の名前だけ呼んだ。 「壱花ちゃん」 ―――ギンッ!!!! その瞬間、生徒会室の中の人間の視線が彼女一点に集中した。 ・・・嫉妬、良く言えば羨望の視線ってとこかな? 「・・・・;;」 「『壱花』ちゃん、このダンボールに入ってる三種類のプリント、右から順番に組んでいってくれるかな?」 その視線を全く気にせず、さらに爽やかと言われる笑顔を彼女のみ向ける。 「・・・・あ、はい」 その視線をかなり気にして居心地悪そうな表情を浮かべる壱花ちゃん。 「じゃあ、茂木、茂木は僕と一緒に職員室ね」 それからその横の俺以外の生徒会役員で唯一の男、俺とは対照的な制服の着方をしている茂木に視線を移した。 「え~、何で?」 「副会長だから」 「え~、会長一人で十分っしょ?俺まだいっちぃと積もる話がぁ・・・」 「僕が行くんだから君も行くんだよ、も・ぎ」 「・・・・あ~はいはい、会長の言うことは絶対~ってね」 茂木が俺の上辺の表情の奥、裏の感情を読み取りダルそうにして席を立ちながら先に入り口の方へと向かった。 「・・・・ふぅ」 それを見て、茂木が自分の隣からいなくなって助かったと言わんばかりに胸を撫で下ろす壱花ちゃん。 「・・・・・・」 残念。 まだだよ。 まだまだ、 全然足りてないからね?
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