鈍色

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前々から薄々気づいてはいたけど・・・ どうしてだろ? こうゆう瞬間だけは、 一瞬自分の中を覆う黒いものが晴れて・・・自分も白になれたような気になってしまう。 そんなことありえないのに・・ 「・・・はぁ」 (あたしってダメダメだなぁ) 「・・・・まぁ、けど」 アンケートの集計を出していた紙に力無く手を伸ばす壱花ちゃんにさっきまでの厳しい声色を緩めて、窓の方を見たまま、そっと壱花ちゃんの頭の上に・・・・ ポンッ… 「この一週間よく手伝ってくれたからね、おかげで例年夏休みにやる仕事も片づいたし、今年の夏休みは受験勉強に専念できるよ」 「・・・・」 窓から入る風に前髪が揺れる。 しばらく沈黙が生徒会室を包んだ。 その後に首を動かして壱花ちゃんの方を見れば・・・ 頭に『いちごミルク』をのせたまま固まっていた。 (何でパック落ちないんだろ?グラグラもしてない。頭が平べったいのかな?不思議だ) 本人に鏡を向けて見せてあげたいよ。 壱花ちゃん、君、今、ものすごくマヌケな人だよ? 「・・・・」 「・・・・ご褒美だよ」 「・・・・ご・・・ほうび?」 「・・・・」 まだよくわかってない様子にムカついて、“裏”の方の顔で 「・・・・クス」 と、意味深に 笑って見せたら―――・・・ 「・・・・!!!ありがとうございます」 と、俺とは反対の、裏表なんかない、真っ直ぐで純粋な、満面の笑みで返された。 しかもまだ頭の上に俺が置いてあげたいちごミルクをのせながら・・・・。 「・・・・」 (どう解釈したんだ・・;;) だけどそんな姿がとても愛らしくて・・・ ありえないのに、彼らみたいに真っ白に戻れるなんてことありえないのに―――・・・ それでもキミとこうしてる瞬間は かわいい。 なんて、ありきたりだけど素直じゃない人間にはとても難しい言葉が さらりと出てくるんだよ。
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