鈍色

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「・・・・いや、別に我慢してたわけじゃ・・・」 「・・・・」 「・・・ごめん」 (って、何で謝る?) ムスっとした表情で俺を睨む壱花ちゃんに、思わず詫びの言葉がポロっと口から出てきた。 自分でも今の流れで『ごめん』は適当だったのかどうか・・・わからなかったけど、壱花ちゃん的にはどうやらその答えが“アリ”だったみたいで、 さっきまでの硬い表情をだんだん崩してって・・・ 「会長って、人のことは余計なことまで気がつくのに・・・自分のことには鈍いんですね?」 そう言いながら最後にはぷっと笑った。いや、笑われた。 今度は俺が溜め息をつく番。 「・・・・はぁ」 (“鈍い”・・・ねぇ~。壱花ちゃんにだけは言われたくなかったんだけど) 「?」 この俺が・:・・ 壱花ちゃんに心配されたり怒られたり、挙句鈍い発言されて笑われるなんて・・・ あ~あ、 俺も相当・・・ フッ… 「・・・・・」 落ちたな・・・。 「!!」 (会長が笑った!!!) 「?」 なぜか急に壱花ちゃんの顔が赤くなった。 そしてすぐにその顔はパッと下に背けられた。 「・・・・」 (何だ??) 「はぁ~~」 不思議に思っていれば今度はさっきのよりも深い溜め息。 ねぇ、何、その脱力しきったような顔? 何なんだ? 不思議の連続だ。 「・・・会長がそういう顔するから・・・」 「は?」 (どの顔??ってか俺のせい?) 「会長って鬼畜で変態なのに」 「は?」 (今度は何?ケンカ売られた?) 「はぁ~。なのに・・・」 「・・・まだ何かあるわけ?」 さっきからの壱花ちゃんの調子にのってるような発言の連発に眉がピクピク動くんだけど。 ったく、何が言いたいんだよ。遠まわしすぎてうざ―――・・・ 「本当は良い人なんじゃないなかって思っちゃって、キライになれないんですよね~・・・」 「・・・・」    
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