鈍色

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「・・・って!べっ別に!だからと言って会長のこと好きになったわけじゃないですよ!?」 そう言いながら俺に手のひらを見せながらそれをブンブン振って急に慌てだす壱花ちゃん。 「・・・・もう遅いよ」 「へ?」 遅いよ。今からどれだけ否定の言葉を並べられたって、もう遅い。 正直、俺が知らない顔を壱花ちゃんだけが知ってるっていうのは気にくわないけど・・・ キミの中の“俺”がそれのおかげで少しは黒から別の色に変わりそうなら・・・ まぁそれも“アリ”かな? って思うけど。 「・・・・壱花ちゃん」 「はっはい?」 「俺ね、別に壱花ちゃんがキライだからイジメてたわけじゃないんだよ?」 「え?」 「瀬田が好きだからイジメてたわけでも無い」 「え??じゃあ・・・」 俺の出していく言葉に壱花ちゃんの首がだんだんと横に傾いていく。 「楽しいからイジメてたんだ」 「・・・え!?」 ああ、今の顔が一番イイ反応。 眉毛が片方上がって、片方下がってたよ。 「そっそれって・・・嫌いなのとあまり変わらないんじゃあ」 オズオズとそう言う壱花ちゃん。 それにニコっと笑って返す俺。 「しかたないな~。じゃあここでひとつ、良い例を紹介してあげる」 「れっ例!?」 「そう。俺ね実は・・・ 左利きなんだよね」 「・・・え?」 俺の例にますます『?』の数が増える壱花ちゃんに、 「ちなみに、右手もとっくに痛み引いてる」 今度は右手をわかりやすいように高い位置まで上げて軽く動かして見せた。 「え・・・・」 どうやらようやく俺の言いたいことが伝わったらしく、壱花ちゃんの顔が引き攣った。 「―――クス。ごめーんね?」 それにまったく詫びれる様子なく、むしろ逆に悪戯っぽく笑ってやると・・・ 「・・・・・」 あ、ほらほら、これこれ。 顔を赤くして、口を1回ギュっと強く結んでから 「かっ会長の・・・・ 会長のバカ~~~~~!!!!」 泣きながら叫び出した。 「あはは」 ほらね?全然変わるよ、壱花ちゃん。 だって俺がそういう気持ちになるのは 君といるときだけなんだから。
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