鈍色

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もっと分かりやすく言えば S極とS極。 つまり反発しかありえないってこと。 ったく。どこに隠してたんだか、そんなドス黒いオーラ・・・ 「優しくする気がないなら壱花にかまうのやめてもらえませんか?あなたなら他にいくらでもいるでしょ?代わりの女性が」 「・・・・」 「壱花は僕の何よりも大切なかけがえのない妹なんだ。だからあなたみたいに平気で嘘をつける人間に振り回されて傷つけられたくない」 「・・・・」 次に出てきた壱化ちゃん兄の言葉には、さっきまでの人を挑発するような音調は感じられなくて・・・ただそこには妹を心配する兄の姿があるだけだ。 何となく、 壱化ちゃんがどうしてああも鈍い性格に育ったのかわかったような気がする・・・。 「だいたい壱花は・・・・」 「?」 具体的には何かわからないけれど急に部屋の空気が変わった。 空気と言うより兄の出すオーラが変わったといった方が適切か? 「はっきり言ってバカなんです」 「・・・は?」 「お人好しっていうか、パシリ体質っていうか!『嫌』って言えないんだよね!!だから頼まれたり命令されたら絶対素直に従っちゃうし!!それにすぐ騙される!!あ~~そうだよ!!変なおばさんに妖しげな壷を買わされそうになったのは壱花だよ!!警戒心薄すぎなんだよ!!だからあんたみたいな人間にも簡単につけこまれるんだよ~~!!あ~~もう壱花のバカッ!!」 「・・・・」 突然頭を抱えて嘆き出す兄。 兄の苦悩・・・。 「ああ・・・わかりますよ、なんとなく。だけど・・・そんなとこがかわいいんですよね?」 「!!」 「だからつい・・・かまいたくなる?」 「そう!!そうなんです!!」 俺のポツリポツリとゆっくり放つ言葉に、頭を抱えるポーズを止めて目をキラキラ輝かせだした。
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