鈍色

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「・・・何って、別に、ねえ?」 ササッ 「うん。ただ話してただけだよ」 ササッ 壱花ちゃん兄がさきほど言っていたものをどこからか引っ張り出してきてそれを見ているところに都合“良く”そこに入ってきた壱花ちゃん。 「??でも今明らかに何か隠して・・・」 「まぁまぁいいじゃん、そんなこと!それよりもうタクシー来たの?」 「??え、うん、そうなんだけど・・・」 「そう!じゃあ会長さんをお見送りしなくちゃね」 俺たちが隠したものが気になるのか部屋の中を見渡そうとする壱花ちゃんの前に兄がわざとらしく立って壱花ちゃんの視界の邪魔をして、そのまま壱花ちゃんを和室から出して先に2人で出ていった。 2人がいなくなってから俺は一旦隠したモノを引っ張り出し、それをまた開いて閉じての動作をするとまた先ほど隠していた位置にそれを戻し俺もその部屋を出た。 そして俺が壱花ちゃんに呼んでもらったタクシーに乗り込もうとした時、兄がコソっと耳打ちしてきた。 「あのさ、“本気”なら応援してあげなくもないからね?」 「・・・誰の味方なんだよ?」 (瀬田と幼なじみなんじゃないのか?) 「それはもちろん!僕はいつだって壱花の味方だよ」 「・・・・」 俺が目を細めてじーと視線を送れば、それに対してニコっと笑顔で返すと手をヒラヒラと振った。 「・・・・」 (読めないやつ・・・) それからタクシーの運転手に行き先を伝え壱花ちゃんちを後にした。
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