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「君が好きだったよ」
卒業式が終わり、誰もいない教室の君の席に座り、ずっと言えなかった言葉を口にする。
君の背中を見つめていたこの教室とも、今日でお別れ。
そして君とも……。
君に想いを告げるなんて、とてもじゃないけれど出来なかった。
男の僕が、男の君に想いを寄せていたなんて知ったら、親友でもいられない。
それが怖かった。
だから自分の気持ちを隠して、君の親友であり続ける事を選んだんだ。
君に彼女ができたと聞けば喜び、振られては一緒に落ち込んだり。
そんな日々も終わりを告げる。
これ以上傍に居るのはキツいから、僕は君と違う大学を選んだんだよ。
これから先も、君は僕の気持ちを知らないまま、彼女をつくり、そのうち誰かと結婚するんだろうな。
正直、それを目の当たりにするのは、とてもじゃないけど耐えれそうにもないんだ。
だから僕は何も言わずに、君から離れることを選んだ。
その為に、志望校をギリギリになって変えたんだよ。
先生には怒られたけどね……。
「バイバイ。次に逢う時は、本当の親友になれたらいいね」
君の机を一撫でして、椅子から立ち上がる。
そして振り返ることなく、僕は教室を後にした。
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