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目覚し時計のけたたましいベルの音が、僕の意識を覚醒させる。
それと同時に、今さっきまで見ていた光景が夢だったのだと思い知らされた。
「……最悪……」
鳴り止まない時計を引き寄せながら、ポツリと呟いた言葉は当然、誰の耳にも届くことはない。
「もう十年も前のことを夢に見るなんてね」
あの日あの時、封印しようと決めた想いを、夢はまるで忘れる事を許さないというように、時々あの光景を僕に見せつける。
しかもそれが、同窓会がある今日だなんて、本当に最悪としか言い様がない。
あんな夢を見た後で、親友として彼の前に立てるか正直不安で仕方ない。
それでも行きたくないと思えないのは、やはり彼に逢いたい気持ちが強いからなんだろうな。
まだ眠気の残る身体を起こして、何とかベッドから抜け出す。
そんなタイミングを見計らったように、今度はリビングに置いてある携帯が着信を知らせるメロディーを奏でる。
土曜日のこんな早朝(とはいっても九時を過ぎている)に電話をしてくる相手は限られている。
面倒臭くて無視を決め込めば直ぐに音楽は鳴り止み、今度は玄関のインターフォンが鳴り響く。
数少ない友人の中でこうした事をする奴は、高校時代からの悪友である、設楽貴明(したらたかあき)しかいない。
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