始まり

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化粧と言っても軽くファンデーションを乗せただけなのだが。 不器用だからか、気を付けないと厚化粧になってしまう傾向がある。 実はナチュラルなメイクの方が何倍も難しく時間がかかるというのは、最近気が付いた。 北村君はナチュラルなほうが好きなような気がするし、気を付けないと…… そこで私は、無自覚に北村君の好みを想像したり、みっともない自分を見せたくないって思ってる自分に気が付いて、頭を振った。 夜中にちょっとだけ話しただけの男の子に、好きとかまだ判らないのに。 誰に気付かれてる訳でもないのに、脳内で言い訳し、そんな自分がちょっと危ない人っぽいのに気付いてげんなりした。 「晶、さっきから表情がくるくる変わるけど、何かあったの?」 「な、何もないっ! ごめんね、行こうか」 「なんか、隠してるような気がするけど、まぁいいわ。 早く朝ご飯食べて、買い出しに行きましょう」 納得はしてないような砂由に促されて、食材を持って部屋を出た。 短大を卒業してから看護学校に入ったっていう砂由は私より年上で、大人びた雰囲気を持っている。 しっかりもしていて、女の子二人で共同生活を送る上での起こりがちなトラブルを起こさない為に、昨日ルールを決めてくれた。 同室なんだから仲良くしましょう、取りあえず形からね、なんて互いをファーストネームで呼び合ってみようって、提案してくれたのも、砂由だった。 砂由のリードがなければ、居心地の悪い思いをしたと思う。
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