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クローゼットから、そう多くはない手持ちの洋服を出し、何を着ていこうか悩んでいると、砂由が戻ってきて呆れた顔をした。
「たかが徒歩10分のスーパーに行くのに、着飾る必要がどこにあるのよ。
それとも、武君が一緒だから?」
からかいを含んだ砂由の詮索に、ドキッとした。
相手は武君じゃないけど。
私の表情の変化を見逃さなかった砂由は眉をひそめた。
「まさか図星なの?
悪い事は言わないからやめておいたほうがいいわ。
晶が手におえる相手じゃないわよ。
楽しいし、優しいし、見目はいいけど、あの男は誰か一人に決めてちゃんと恋愛するタイプじゃないわよ」
「ち、違うから。
私、武君みたいな人苦手だし。
でも、砂由ってあんなちょっと話しただけでそんな事が判るんだねぇ」
砂由の鋭い観察眼に、感心だ。
私は絶対そんな事見抜けないもの。
いや、多分女の子からもてるだろうなとは思ったけどさ。
砂由は満更でもなさそうに、口角をキュッと上げて、微笑んだ。
「色んな人間と接していれば、大体判るようになるわよ。
じゃぁ、晶が朝から化粧頑張ったり、洋服を選んだりしているのはどうして?
もしかして、同室の樹の為?」
砂由の顔がグッと近付いてきて、瞳が妖しく光った。
なんだかすべてを見透かされてるみたいだ。
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