始まり

3/16
162人が本棚に入れています
本棚に追加
/329ページ
寮で迎えた初めての夜―― ナースへの第一歩を踏み出した高揚感や、引っ越しの慌ただしさで昼間は感じなかったけど、丑三つ時と言われる時間になった頃、同室になった三上砂由の寝息を聞きながらどうしようもなく淋しくなった。 自分はホームシックになるタイプではないと思っていたけど、そうでもなかったみたいだ。 何度も寝がえりをうったけど、眠りが訪れる気配は全く無い。 そうなると、じっと横たわっているのも苦痛で、砂由を起こさないように注意してベッドを抜け出した。 喉もやたらと乾いているし、ついでに何か買おう…… やたらと響く足音を殺すのに四苦八苦しながらロビーに降りた私は、自動販売機でスポーツドリンクを購入した。 決して心地よいとは言えないソファに座って喉を潤していると、男子の居住区の方から、足音とボソボソと喋る低い声がした。 迂闊にもパジャマのままロビーに降りてきた私だけれど、一応男性にこんな格好を見られたくないって羞恥心はある。 せめてジャージを着ていればよかったと後悔しつつ、鉢合わせする前に部屋に戻ろうと立ち上がった。
/329ページ

最初のコメントを投稿しよう!