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仲間を見付けて嬉しかったのか、不貞腐れていた北村君の顔が、綻ぶ。
「暗くなると、不安になるもんだって。
僕や牧野さんの反応が普通なんだよ」
子供っぽい北村君の反論に、本田君は苦笑いした。
「ちょっと、牧野さんここにいて。
すぐに戻るから」
何かを思い付いたように北村君は男子の居住区のほうに走っていってしまい、暗いロビーには、私と本田君が残される。
「慌ただしいな」
クスクス笑って、ソファにかけて、私にも座ったら?と促す。
仕方がないので、少し間を空けて座る。
「そう言えば、よく私の名前覚えていたわね。
私なんて、同室の子と近くに座っていた子位しか、覚えてないのに」
話題を探し、そう言えば本田君が私の顔を見るなり名前が出た事を思い出した。
「牧野晶さんでしょ。
俺、可愛い女の子の名前と顔、一発で頭に入れるのが、特技」
「なっ」
いたって真面目な顔をして、しゃあしゃあと言われた台詞に絶句する。
年齢=彼氏いない歴で、しかも女子校だったせいで、男性に免疫のない私は、どう返せばいいのか判らない。
おまけに、本田君のような、いわゆるイケメンなタイプは、私がもっとも苦手とする人種だ。
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