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顔を赤くして絶句してしまった私を見て、本田君が苦笑いした。
「口説いている訳じゃ無いから、心配しないで」
それはそれで失礼な物言いだと思うが、なんとなく憎めない感じがする。
私もつられて噴出してしまった。
「樹、何やってるのかな?
寒いだろ?」
「大丈夫だよ。
このカーディガン暖かいし、パジャマの下にはババシャツ着てるし」
春とはいえ、夜は冷え込む。
防寒対策はばっちりだ。
張り切って答えたけど、よく考えたら男性相手にババシャツ着てるとか、はしたない。
女子校生活が長かったからか、どうもその辺の感覚がずれている。
恥ずかしいと思っているのは私だけで、本田君は何も感じてないみたいだけど。
私は慌てて話題を変えた。
「北村君と、仲良しなんだね。
出身が一緒だとか?」
「全然。
今日初めて会ったんだけど、同室だしな。
樹は素直だし、打ち解けるのも早いさ」
「ふぅん……」
会った初日に昔からの知り合いって勘違いされる位仲良しになった二人が、ちょっと羨ましい。
私は砂由と、そんな風に打ち解けられるかしら?
「牧野さん、表情が判りやすい」
私を観察していたらしい本田君に笑いながら言われて、反論しようとした時、遠慮がちに、でも急いだ様子の足音が近付いてきた。
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