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「ちっ、ついてねぇ」
男の視線の先では、車の左前輪が無気力にひしゃげていた。
男は高そうなスーツの懐から携帯咒信機を取り出してディスプレイを確認し、再度舌打ちをした。
「こんなとこで、なんで圏外なんだよ」
男は仕方なく自宅の方角へと歩を進める。
眼前は、
闇。
どろりとした暗黒は、まるで自らを消化せんとするかのように口を開けている。
そんな思いが胸を掠めたが、しかしそれも男の足を緩めさせるには至らなかった。
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