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出会い
"トン、トン、トン"
ん!?
物音がする!?
痛みに耐えていた少年の手はすぐさま壁に張り付いた。
少年は壁に耳を押し付け息を殺して、かすかな物音に聞き入った。
"タッ…トン、タッタ…トン、タッタタン"
確かに聞こえる!
気付いた時には壁を叩いていた。
「おーい!誰かいるのか!いるなら返事をしてくれ!」
さっきまで聞こえていた物音がピタリと止まった。
少年は呼吸を止め、祈るように目をつぶる。
壁が静かに囁いた。
「…誰?」
人の声だ!
何十年も聞いてなかった様な気がした。
嬉しさが込み上げてきた、独りじゃなかった!
「君は誰!?僕は…、分からないんだ、記憶がないんだ、名前も分からないし、何でこんな所にいるかも分からない、出たいのに出口もない、もう、どうしたらいいか…」
「そうなの…」
「君は?君がいる所は外なのか!?俺をここから出してくれないか?誰かを呼んで来てくれてもいい!助けてくれ!」
「…、それは無理よ」
「ど、どうして…」
そう言いながらも少年は気付いていた。
「ここも出口がないもの」
彼女の声を聞いた時から可能性は感じていた、ただ認めたくなかった。一筋の小さな希望にかけたかったのだ。
「そっ、か」
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