出会い

1/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ

出会い

"トン、トン、トン" ん!? 物音がする!? 痛みに耐えていた少年の手はすぐさま壁に張り付いた。 少年は壁に耳を押し付け息を殺して、かすかな物音に聞き入った。 "タッ…トン、タッタ…トン、タッタタン" 確かに聞こえる! 気付いた時には壁を叩いていた。 「おーい!誰かいるのか!いるなら返事をしてくれ!」 さっきまで聞こえていた物音がピタリと止まった。 少年は呼吸を止め、祈るように目をつぶる。 壁が静かに囁いた。 「…誰?」 人の声だ! 何十年も聞いてなかった様な気がした。 嬉しさが込み上げてきた、独りじゃなかった! 「君は誰!?僕は…、分からないんだ、記憶がないんだ、名前も分からないし、何でこんな所にいるかも分からない、出たいのに出口もない、もう、どうしたらいいか…」 「そうなの…」 「君は?君がいる所は外なのか!?俺をここから出してくれないか?誰かを呼んで来てくれてもいい!助けてくれ!」 「…、それは無理よ」 「ど、どうして…」 そう言いながらも少年は気付いていた。 「ここも出口がないもの」 彼女の声を聞いた時から可能性は感じていた、ただ認めたくなかった。一筋の小さな希望にかけたかったのだ。 「そっ、か」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!