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女の子は笑顔のままに僕に話しかけてきた。
「何を読んでいるんですか?」
僕は何故か緊張してしまいぎこちない返事になってしまった。
「えっ、え、あぁ、これはコナン・ドイルです」
僕は詩織を挟むのを忘れて読みかけの小説を閉じて本の表紙を女の子に見せた。
「コナン・ドイル?シャ―ロック・ホ―ムズですかね」
女の子は笑顔で僕にそう返してきた。僕は女の子の笑顔に見とれてしまいそうになる自分を必死で抑えて返事をした。
「そうです。とても面白いんですよ。ホ―ムズの推理にはいつも驚かされます。ついつい時間を忘れて読んでしまうんです」
「私も小説は好きなんです。でもシャ―ロック・ホ―ムズはまだ読んだ事がなくて」
そう言いながら女の子は風になびく長い髪を耳にかけた。サラサラした艶のある黒髪。女の子のひとつひとつの行動が僕にはとてもかわいらしく見えた。
僕は女の子に本を差し出して言った。
「よかったらこれ、貸してあげます」
女の子は驚いた表情になって言ってきた。
「でも、でもまだ読んでる途中なんじゃないんですか?」
「それなら大丈夫です。楽しみを後にとっておくのもまた良いものだと思うので。それに、他にも読みたかった本があるので、そっちを読むことにします」
僕の言葉を聞いた女の子はまた笑顔になって僕に言った。
「ありがとうございます。少しの間お借りします」
そう言って彼女は本を受け取った。
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