余命

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すっかり真っ白に染まってしまった私の頭。もういい歳になった。 会社は6年前に定年退職をした。それ以来私は妻と二人で毎日をのんびりと過ごしていた。 いつかは妻とわかれる日がくるとは解っていた。だがその日は私の想像していた時期よりも、もっとずっと早いものになりそうた。 妻はいつもと変わらぬ態度で私と接してくれる。長年つきそった妻は私の性格をよく知っている。私が変に気を使われるのを嫌うのを知っての行動だ。 最近私は考えるようになった。本気で身の回りの整理をしなくてはと。 余命わずかなこの命。 終わりが見えてくると始まりの場所に帰りたくなるものだ。 私はあの場所に出向こうと決めた。私と妻、二人が初めて出会った夕日の綺麗なあの場所に。
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