*雨と子*

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ

*雨と子*

   僕を捨てた母は、僕を探しに来るはずなんてなかった。お腹を空かせた子犬を食べてしまうという話を聞いた。残酷な世界にどうして僕を生んで僕を捨ててしまったの? 「死にたくない…」  どうして、どうして僕はいらなかったんだろうか。生んでくれと頼んだわけじゃない。答えのないまま僕は考え続ける。  雨が降っていた。空を見上げたらぼんやりしていた。 「母さん……」  要らないなら、母さんが殺してくれたら良かったのに。  もう意識がないや。さようなら、母さん。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!