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「で、どうしてあなたがこんなモノを持っているわけ?」
女はフタを開け、新しくタバコを吸い直すでもなく着火させた。
カチン、ジュボッ……
「明らかに必要のないモノよね。これ。タバコを吸える年齢でもないし、ましてやあなたには……」
水平線から顔を覗かせ始めた太陽にそれをかざしながら、反射した光に眼を細める。ゆらゆらとそこに灯された炎の赤が、太陽の橙と鮮やかなグラデーションを作り出していた。
「………いいから返せよ」
彼は取り乱した事に対する照れ隠しのつもりか、少し怒気をはらませながらぶっきらぼうにその返却を命じた。しかし女の興味は依然それから離れるわけでもなく、吸い寄せられるかの如くそれが出す炎に視線を注ぎ込んでいた。
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