光と共に。

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 Ataraxia… 空語。  覚醒と睡眠の間―微睡みのなかにいる。  沈んでいるのか、浮かんでいるのか、それともただ漂っているだけなのか。  海を、空を、光を、闇を。  全てが等間隔にみえるようで、全くいびつな感じもする。無感覚な時間。生命の排除された空間。  『無』  それは感知出来ないはずのセカイ。しかし微睡みの中にあって彼は確かに感じていた。  1分が1秒に、1時間が1日に。  時間の感覚も意味を失う中で、ただそこに「有り」続けた。 「―同じだね」  《声》がした。それは聴覚で感知するものとは違う。明らかに自分が意識的に発しているものではない、思考の底から浮かび上がってくるような感覚。
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