光と共に。

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「―キミには『色』がない」  かすみがかったような意識がその《声》によって呼び覚まされた時、そのセカイにも色はなかった。暗くもなく、かといって明るくもなかった。どこまでも見渡せるようでいて、手元さえ霞んで見える不安定なセカイ。  確かに自分には色がない。髪にも瞳にも。白に見えるかもしれないが、それは光を通したり、反射させることからも分かることだろう。眼に至ってはその違いが顕著だ。 「―何も容姿について言ってるんじゃない。色が無いのは、キミの《ココロ》さ―」  心の色とは何だろう?そもそも心に色があるのかも分からない。仮にそれがあったとして、どうしてその色を知覚し認識しようか?  思考に意識をとられていると、何時しか自分の周りには円を描いて取り囲むように赤や緑、黄色、青といった色の付いたカードが、数え切れないほど一定の速度を保ちながら、ぐるぐると廻っていた。  徐にその中の一枚に手を伸ばしてみる。すると、なんの手応えも無しにカードはその手をすり抜けていった。 「―キミには『色』を選べない。何にも属せないから」  では、示された選択肢に一体何の意味があるのだろう?何処にも属せないと言うことは、何処にも自分の居場所が無いと言うことだ。ならば何の為にココに存在している?自分はどこから来て、どこへ行くのか、それを自分で決めることは出来ないというのだろうか?
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